6月中旬、初めてスペインを訪れた。
まずは、首都マドリッド市内を歩いた。気温は30度を軽く超えていたが、乾燥した気候なので、木陰は比較的しのぎやすい。趣のある石作りの堅牢な街並みを見ていると、やはり地盤の安定が石造建築物の長期保持に寄与しているのだろうなと思った。日本のような「地震大国」では、せいぜい城郭の石作りまでなのだろうか。




マドリードから車で1時間以内、タホ川がU字形に曲がる高地に、まるで絵画のように美しい中世の城塞都市が見えた。
長い歴史のなかで、ここ古都トレドをめぐってイべリア半島先住民、ゲルマン人、イスラム人、そして大小さまざまな国が入り乱れて覇権を争いあった。旧ユダヤ人街も残っていた。
今は、15世紀末のキリスト教徒によるレコンキスタ(正確に訳せば『再征服』だろう)後に整備された、静かな風情なのかもしれない。しかし、この地にはこれまで実に多くの血が流れたことを思わざるを得なかった。


