泣き虫 ハァちゃん


久しぶりに名著に出会った。
日本人の心の問題について深い知見を披露してくれた、故河合隼雄氏の最晩年の絶筆、自伝的遺作にして唯一の童話だという。同氏の幼少期の体験で、ほぼ事実に即しているようだ。

丹波篠山の豊かな自然環境と、温かく恵まれた親子兄弟の家庭環境、そして懐かしい、伝統的な日本人の家族文化が読み取れる。
何回か訪れたことがあるので、読んでいて土地勘もわく。

同時に、昭和3年生まれの故人の中心的な関心がすぐ下の弟のわずか2歳の「死」に由来することもよく分かった。
心洗われる思いで読了した。
日本にスクール・カウンセラーを導入した功労者とのこと。

絶筆なのは、死期を予感でもされていたのだろうか。